• 『ブルーの金魚』 鈴木 利一
  • あらすじ
  • 大学入学を控えた春休み。凛は、姉の本棚から1冊のノートをみつけた。彼女の2歳年上の姉は13歳のとき、交通事故で亡くなっている。ノートをめくってみると、そこには姉のではない文字で魔法使いの物語が綴られていた。
  • ──「とある国」という国のメープル谷に、エルフという腕のいい魔法使いの子供がいた。成長していくうちに、エルフの灰色の瞳は赤に、黒い髪は青に変わっていった。村人達は、過去の例から、それはやがて強大な魔力を持つ兆しと恐れ、エルフを捕まえ処刑しようとした。幼い頃に母を亡くし、父にも見捨てられたエルフはひとりで旅に出る。
  • 逃亡の末に、エルフは美しく小さな村にたどり着く。村の人々はエルフの赤い目や青い髪を見ても気にせず優しくしてくれ、エルフはドットという青年の家に居候することになった。エルフはランジアという娘と知り合うが、なぜか会うたびに言い争いを重ねてしまう。そして、エルフがランジアを憎々しく思った瞬間、ランジアはエルフの魔法にかかってしまった。魔法は強すぎ、エルフにも解けない。どうすれば、魔法は解けるのか。エルフは苦しみ、村の長老に会いに行く──
  • この物語を誰が書いたのか。姉はなぜ、このノートを持っていたのか。読み終えた凛は書き手を探し出し、そこにもうひとつの悲しい物語があったことを知る。
  • 評価・感想
  • 「お姉ちゃんの仏壇」という、読み手が「どうしたんだろう?」と思わせる冒頭。まずは、この最初の一行が「うまい」と思いました。家族を亡くした者が抱く罪悪感や、それと同時に心に広がる思い出を、自然に読めるよう、とても丁寧に描いています。文章力もあり、人や物に対する優しい視点に好感も持てます。ノートに綴られたもうひとつの物語である、エルフの話も風景や状況の描写が達者で、見たこともない世界にうまく読み手を引き込んでいきます。伏線もちゃんと敷かれ、構成がしっかり練られています。テーマやメッセージもきちんとしてあり、小説の持つ細々とした要素に対して目配りされていて、自分ならではの小説を書くことへの意気込みも感じられます。欲を言えば、これだけ書けるのだから、もっと現実に即したラブストーリーを書いて欲しかった。もっともっと書けると思うので、今後に大いに期待したいです。
 
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