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- 『ワリナキナカ』 沢木 まひろ
- あらすじ
- 原宿のヘアサロンで働く美容師・暁(あき)は、妹・泉に押しつけられた猫とふたり暮らし。暁と泉姉妹は、母親が家を飛び出し、父が自殺した後、施設に預けられた。幼い泉は養女として引き取られたが、暁は施設で育てられ、自分ひとりで生きていくと決めた。
複数の男友達とセックスを楽しんでも恋愛はしない暁の前に、ビル清掃会社に勤める祐輔が現われる。暁にしてみれば肉体だけの関係のつもりだったが、実直な祐輔は暁への恋慕を打ち明け真剣な交際を迫る。初めは煙たがっていた暁もやがて祐輔に対して心を開きはじめるが、その矢先、暁は祐輔とセックスができなくなる。抱き合っても暁の身体が反応しないのだ。それでも祐輔の暁への思いは変わらない。ふたりはどんな結論を出そうとするのか。
自分たちなりの絆のあり方を模索する暁と祐輔の物語に、家族の絆を求めては空回りする泉のエピソードが交わり、物語に立体感を与えている。
- 評価・感想
- 家族であることを拒否する暁と過剰に家族であろうとする泉のコントラストが、現代の人間関係の一側面を象徴しているようで面白い。登場人物は多いが、ひとりひとりの個性を的確に描写しており、読み込んでいくとその人柄や人生観まで浮かんでくる。暁の男友達たちや祐輔の職場の人たちも人間味を感じさせる描き方がされている。暁の生き方に影響を与えた小さな美容室の店主と、高校の国語教師だった祐輔の祖父、ふたりが登場する場面はわずかだけれども読者に強い印象を残すだろう。そして、なんといっても、姉御肌の暁の魅力がきわだっている。この人物描写の巧みさがこの作者の持ち味か。底力ある書き手として推す。