第10回ラブタメ大賞一次通過作品【16】
『探偵物語〜ハッピー・エンドのロミジュリがあってもいいじゃないか!』/一色十郎太
あらすじ&選評
ロミオと呼ばれている台場紀夫は13歳のとき、6歳の少女、樹里と出会う。彼女は大金持ちで身勝手な父親に捨てられ、姿を消した母親を探していた。それに協力したロミオは警察に補導され、その理不尽さに腹を立てて荒れた生活を送るが、親身になってくれた佐藤弁護士のお陰で、10年後の現在は佐藤法律事務所でアルバイトしながら勉強する司法浪人になっている。 そんなある日、法律事務所が探偵事務所に調査を依頼した報告書が間違って送られて来て、ロミオが取り替えに出向くと、探偵が殺され、かたわらに女子高生がいた。それが十年前に出会った樹里だとわかるが、彼女は母親探しに協力してくれなければ間違えて送られた報告書を渡さないと言い、ロミオはまた協力することになる。樹里の父親の妨害と警察の追跡をかわして、何とか母親と対面させることができ、樹里もロミオが十年前のお兄ちゃんだと気づいて急速に心を寄せる。だが、樹里が持っていた書類は探偵殺害の犯人に関わるもので、その陰謀にハメられそうになり……。
ドラマの『探偵物語』ばりの軽くてテンポがいい文章とストーリー運びが魅力的。10年前の傷を引きずりながら大金持ちの美人のお嬢さまと母親探しの逃避行、追っ手とのアクションシーン、樹里の父親や警察との駆け引き、殺人犯に至る謎解きと盛り沢山な内容を楽しく読みました。ちょっとご都合主義な部分もつい騙されてしまう。難点は、タイトル付け。長すぎるし、結末がわかってしまうので変えたほうがいいでしょう。