第10回ラブタメ大賞一次通過作品【10】

『迷宮のヒエロスガモス』/大野小花

あらすじ&選評

三回角を曲がると元いた場所に戻れなくなる迷路の町で育ったジャンとレベッカは互いに魅かれあうようになるが、ある日、家を飛び出したレベッカは三つ目の角を曲がって帰り道を見失ってしまう。ジャンはレベッカを探す旅に出る。お互いの姿を探して迷路の町をさまよう二人は、さまざまな経験を重ねて大人になっていく。そして、ようやくお互いがかなり近いところにいるらしいことに気付いた頃、迷路の町に女性を狙った連続殺人事件が起きていた。新聞記者ナッシュによって二人は怪事件に巻き込まれていく。迷宮都市を取り巻く不穏な空気の秘密は何か。はたして二人は出会うことができるのか。

架空の都市を構築する構想力に舌を巻いた。寓話のような設定ですが、道に迷うと帰れなくなる不思議な迷路の都市のディテールを破たんなく描き出しているので、どの場面もリアリティをもって読むことができます。サスペンスタッチのクライマックスから結末のスペクタクルに至るまでの物語の加速感も痛快。作品の個性も強く、今回の大賞に相応しいと感じたため、通過としました。