第10回ラブタメ大賞一次通過作品【9】

『キューピッドの花束』/たきもとひさえ

あらすじ&選評

街の小さな花屋「アモール」は、風変わりなサービスをしている。それは、恋の告白代行、通称コクリ屋だ。この店で働く絵実は、コクリ屋として片思いに悩む人の手助けをしていた。ある日、店に感じの悪いイケメン真矢野がバラを買いにやってくる。彼の正体は「別れさせ屋」。「恋愛には価値がない」と冷淡な発言をする真矢野に腹を立てる絵実。しかし、真矢野が「別れさせ屋」を始めた理由は、実の姉があるストーカー事件に巻き込まれたからだった。真実を知り、真矢野に惹かれ始める絵実。そこに別のストーカー事件が発生し、事態は意外な方向へと向かう。

コクリ屋と別れさせ屋の恋愛という発想が面白い。さらにいろんな伏線がはられたストーリー展開や謎解きなど、読み手を飽きさせない工夫が随所になされていて、エンタテイメント小説として優れている作品です。全体的によく書けていますが、大人が読む作品としてはぐっとくる(もしくはドキドキする)恋愛描写がないのが非常に惜しい。キャラクターの書き分けができていることが読みやすさにつながっているものの、人物描写にもっとふくらみがあったらもっといい作品になると思う。キャラクターの生い立ちや性格を連想させるエピソードをもっと盛り込むと、人物に深みやリアリティが出てくるのではないでしょうか。ブラッシュアップするべき箇所が明確なことと、それを成し得るだけの可能性を感じたため、通過としました。