第10回ラブタメ大賞一次通過作品【4】
『パールオパール』/寺地はるな
あらすじ&選評
主人公の清海は物語の冒頭、血のつながっていない義兄の清人の失踪事件に巻き込まれる。生活力がなく、大人になれきれない清人は、幼なじみの妻のまひろが妊娠したことで父になることから逃避したのだ。洋菓子店店員に過ぎない清海は、狭い賃貸アパートの部屋に転がり込んできたまひろを居候させることになる。清海にとって、義母の時子はダメ人間の清人と同様、血はつながっていないが、数少ない心の支えのひとつだ。時子はふたり目の夫の連れ子だった自分に心強い愛情を注ぎ続けてくれていた。まひろの出産、別れきれない不倫の男とのいざこざ、新しい彼氏との出会いなどを経て、清海は自分が抱える罪の意識やわだかまりを少しずつ解いていく。
ヒロインの清海、天然美少女のまひろ、男運がないながらもマイペースでたくましく生きる義母の時子、腐れ縁ですり寄ってくる不倫男の善、めんどくさい過去を抱えたイケメンの新恋人の律、ひたすらダメ人間の義兄の清人など、すべての登場人物に血の通ったリアリティをもたせようとする作者の努力が伝わってきます。その涙ぐましい努力は冗長さにつながったりもしますが、大部分はうまく笑いに収斂されていて、楽しい読書体験でした。血縁を超えた人と人とのつながりを模索する登場人物たちには誰もが感情移入してしまうはず。女性読者の中には熱狂的ファンになる人も多いのではないでしょうか。