第9回日本ラブストーリー大賞 2次選考通過作品(3)
ピュグマリオンの恋人/中島隆善
鈴木雄介は、30歳過ぎのアイドルオタク。会社をサボっては、人気アイドルユニット「Cuty Coolのメンバー、河本夏海の追っかけに精を出し、現実の恋愛経験はなし。かたやOLの大河内朱音は、いわゆる「歴女」・坂本龍馬を想うあまり、現在の軟弱な男には興味なし。そんな二人が、河本夏海が龍馬を主人公にしたドラマに出演したことがきっかけで出会う。互いに相容れない二人だったが、朱音は厳格な父親の薦める見合いを断るために雄介に許婚を演じてもらうことになり、次第に相手を意識し始める。だが、ひょんなことから、アイドルの夏海が雄介の部屋に転がり込んできて……。
アイドルオタクと歴女が知り合って恋をするという図式が現代的で、さらにはそのマニアぶりもよく描けていておもしろいと、テーマとそれぞれのオタクの描き方に高い評価が集まりました。話の展開はベタなラブコメでありながら、エンターテイメント要素もたっぷりあり、飽きることなく最後まで楽しく読めたという好意的な意見も多く出ました。
ただし「古賀」というキャラクターについては厳しい意見が多く、古賀がサイコパスだったというまとめ方には「安易すぎる」という厳しい評もありました。また、タイトルがわかりづらいので、タイトルにも一考の余地があるとの指摘もありましたが、全体的なテーマのおもしろさと完成度の高さから、通過に至りました。