第9回日本ラブストーリー大賞 1次選考あと一歩の作品(5)
『母色のマフラー』/坂上 順太
あらすじ&コメント
図書館司書の夏子は義母のいじめと理解の無い夫のせいで離婚。ストレスで体調を崩し娘の親権も取られるが、義母の急死で元夫は娘を押し付けてきた。図書館の大きなプロジェクトと反抗する娘との関係に悩むなか、夏子の体調はさらに悪化。そんな時、見学に行った図書館で大学時代に好きだった桜木と会い仕事や家庭の相談をする。二人はひかれあうが夏子にすい臓がんが発覚。入院した夏子は娘に「お母さんの癌はあんたのせいよ」と言ってしまう。無言で病室を去る娘を見て悔いた夏子は手編みのマフラーを残そうとする。かつて、同じすい臓がんで亡くなった母が娘の夏子に編んでくれたように……。
ストーリーに著者自身の姿が見えるとそこだけ浮いてしまいます。自分がよく知っていることを書く時は物語の世界から外れないよう気をつけましょう。また、登場人物の感情、行動を丁寧に書くことで人物の含みや陰影が生まれます。全体は上手くまとまっています。