第9回日本ラブストーリー大賞1次通過作品(11)
『故意のキューピッド』/月下 雅歌
あらすじ
作家志望の冴えない「僕」の前に、「チェルシー」と名乗る恋のキューピッドが現れた。見た目は4歳児だが、口が悪く、難しい言葉をたくさん知っている小憎らしい天使は、「僕」に恋人を作ってくれるという。そして周囲にいる女性たちに、次々と矢を放ち始める。その矢が刺さったとたん、みんな「僕」に恋してしまうのだ。大学時代から気になっていた友だちの真美にも矢が放たれ、とたんに彼女は「僕」を意識し始める。けれど「僕」は他力本願で恋が叶うことに。
評価・感想
恋のキューピッド(天使)が主人公を手助けするという、ある種、ファンタジーの王道ストーリー。そんなに新鮮味があると思わないのだが、草食系&非モテの主人公のぼやきや、毒舌なチェルシーとの掛け合いがすごくいいのだ。とにかくキャラクターが魅力的。著者の妄想がそのままカタチになったのでは? と思いながら楽しく読んだ。ただ、矢を放たれた女の子たちが起こす行動が地味。「押し倒される」「劇的に告白される」など、『モテキ』のように突き抜けてもよかったのではないか。また、矢の効力が10年間もあるという設定なのにもかかわらず、矢が刺さった女性たちをフォローすることなく終わってしまったのはいただけない。そのあたりを改善し、真美とのあいだにも障害のひとつやふたつ用意すれば、もっと胸踊るラブストーリーになると思う。