第9回日本ラブストーリー大賞1次通過作品(4)
『愛のような日々』/釜田 雅彦
あらすじ
外資系コンサルティング会社の美人副社長、絵美と、コンピューターメーカーの営業課長、高氏は、大手タイヤメーカーのシステム変更を巡ってコンペで競い合うことになる。
その説明会場で顔を合わせた二人は二十年振りの思いがけない再会に驚く。彼らは高校の同級生で、当時、高氏はフォークシンガーを目指して、年上のミュージシャン、圭子からギターもセックスも教え込まれながらライブ活動をしつつ、絵美に惹かれていた。絵美も高氏の歌に惹かれて密かにライブに通っていた。卒業間際にようやく告白の機会が訪れるが、ささいな思い違いで喫茶店で喧嘩別れしていた。その後、絵美はアメリカに留学するが、それには圭子が関わっていた。
コンペはタイヤメーカー内の出世競争が絡んで深謀遠慮が張り巡らされるが、ライバルの二人が裏で手を組んで戦う。その間に、お互いに知らなかった過去が徐々にわかり、また惹か合うようになるが、アメリカに住む圭子には父親を明かさない二十歳の息子がいるとも発覚し……。
評価・感想
1970年代の吉祥寺のライブハウス、ニューヨーク、タイヤメーカー、麻布のバーを舞台に、恋愛とビジネス、過去と現在が絶妙に絡み、さまざまな要素でドキドキさせて引っ張って行くストーリーテリングが見事。
フォーク歌手への夢が破れコンピューター会社に居場所を見つけた高氏、失恋をきっかけにアメリカに渡って成功した絵美、キーマンになる圭子、コンペに絡む善悪両方のビジネスマンたち、ライブハウスのオーナーと、登場人物たちもキャラが立っている。
ちょっと勧善懲悪的な安易さも感じるが、恋愛小説と企業小説をドッキングさせた魅力を余すところなく書き切っていると思う。