第二次選考通過作品詳細

『月夜の影に、捧げる』 森 しずく

 『月夜の影に、捧げる』は、旧家に嫁いだ女性・美冬が、地下で身体の不自由な夫の兄・拓治の世話をさせられるうちに、彼に恋をし、やがて常軌を逸していくさまを描いた恋愛ホラー。
 高い評価となったポイントは、「こんな世界観が描けるなんてすばらしい」という点で、「文章のテンポがよく、地上での嫁としての生活と、地下で拓治の世話をする世界はどちらも隠微な光を放っていて、一気に読み終えた」、「殺人については現実味がなさすぎる気もしたが、それによって主人公の愛情の異様さが増していくと思えば気にならなかった」等、幻想的な世界を堪能した選考委員から賞賛の声が多くあがりました。
 「ホラー色が強いため、読む人によっては嫌悪感を抱くかも」と、作品のテイストが万人受けするものではないことを心配する声もありましたが、これほど完成度の高い作品を落とすのはしのびないとの意見が圧倒的で、通過作品となりました。

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