第一次選考あと一歩作品

『夏の環』 小田朋代


選評

 高校男子・村池くんと斎藤夏子さんのまどろっこしいけれど初々しい恋物語。自分の下駄箱に入っていたラブレターを落とし物として届ける守のエピソードには大いに笑いました。真面目で不器用な守と、外国人とかけおち未遂したと噂される謎めいた夏子、じつに魅力的な顔合わせです。守が夏子の噂の真相を気にし出すところも、「それを恋って言うんだよ」と教えてあげたくなるような鈍感さが上手く描かれています。そして、守の鈍感エピソードがクライマックスへの伏線になっているところもお見事。ほとんど文句のつけようがないのですが、ストーリーに新味がない。この表現力をもって本格的な恋のドラマに挑んでいただきたいと思うのです。

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