第一次選考あと一歩作品

『泳げるまで。』 結季花


選評

 幼なじみとのぎこちなかった初体験がトラウマとなり、セックスに臆病になっている30歳のミチル。条件重視の結婚をするが、結婚生活は破綻。自暴自棄なセックスを経験し、体調異常をきたしたミチルは、訪れた整体院である男性と出会う。次第に彼に魅かれていくミチル。彼女は、性のトラウマを越えられるのか……。
 プラトニックな恋愛関係を扱った作品が多いなかで、「性」というテーマに真正面から取り組んだ点を評価したいと思います。大人の女性にしか書けない作品なのかもしれません。ただ、惜しむらくは、かなり退屈。彼女の内省的な叙述には、ハッとする部分も多くあるのですが、具体的なエピソードに関しては、迂遠で、説明的。会話も筆者が意図したほどのイキイキした雰囲気を出せていません。エピソードに関する記述を、シンプルでもっと含みのあるものにしたほうが、このテーマにそぐう気がします。
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