第一次選考あと一歩作品

『PLAY』 川原佳己


選評

 ロックバンドのギタリストであるダイは、メンバーの紹介でミカと出会い、付き合い始める。プロのミュージシャンになり、ミカと結婚する夢を追いかけ続けるダイだが、現実は厳しい。夢をあきらめようとした矢先、最後に出したアルバムが話題になるという大きな幸運が舞い込む。メジャーデビューし、バンドは順調にスターへの道を歩み始めるが、ミカとの関係は、その成功に反比例するかのように離れていく。ときがたち、ダイは、ミカは……。
 人気コミック「NANA」を連想させる設定で、勢いのある作品。主人公であるダイが、変にオリコウな草食系ではなく、チープな野心と欲望でパンパンになっているところも、個人的には気に入りました。とくに前半は、ダイのそうした性格を裏付けるエピソードもきちんと描かれていて、楽しめました。ただ、後半になると、明らかに息切れ。とくに、ミカとの再会のシーンなどが弱く、主人公のやるせなさがうまく伝わってこない点が、ラブストーリーとしては致命的な欠陥であると思います。可能性を感じさせる筆者だけに、惜しい! ペース配分を調整すると、リーダビリティのある作品になるのでは?

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