第一次選考あと一歩作品

『失恋モノローグ』 SHOSAKU


選評

 あるエリート科学者と「アメリカンムービーのヒロイン」さながらの美女との交流を描いた「ほんの少しの本当と嘘」、主人公「俺っち」と大学のサークル仲間が織り成すひと夏の甘酸っぱい青春ストーリー「俺っちの夏物語」、出会い系サイトにはまる男女の色模様をコミカルに描いた「新しい出会い方のススメ」など、5編の独白小説を収録した短編集。
 それぞれの話は独創的で楽しく読めますが、はたして独白である必要があったのか、疑問が残ります。独白だと、場面背景や状況を詳しく説明できないという不自由さが大変なハンデとなりますが、この作品では、そこはお構いなしに説明してしまいます。独白という設定が破綻してしまっており、そこが残念です。普通の一人称小説、もしくは三人称で淡々と書いたほうがよかったかもしれません。
 しかも、5編の短編がまったく独立した作品という点が大きなマイナスです。全体を通底するテーマがなく、散漫な印象をうけます。ひとつひとつをもう少し練りこみ、微妙に登場人物が各作品でクロスするなど、工夫が欲しかったです。
 とはいえ作品の独創性、ギャグの切れ味などは素晴らしかったので、次回以降、作品全体の構成に気を配った丁寧な作品を期待したいと思います。
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