第一次選考あと一歩作品

『菊子のファーストラブ』 天ノ宮 和


選評

 人気絶頂の若手女優の白水優は、「僕」こと三反田公平のことを初恋の相手だとテレビで告白。その日から公平の回りは大騒ぎに。彼女との再会プランを強引に押し付けてくる業界の人間たちや、脅迫や中傷をする彼女の熱狂的なファン、自分の思惑ばかりを頼み込む公平の周囲の人間たち。そんな騒ぎのせいで、公平と恋人の久美の関係も距離ができる。年明けのイベントで優との対面が実現することになり、公平はある計画をあたためる……。
 同級生の有名人の発言のために、日常が一変してしまうドタバタはいかにもありそうな展開。商魂たくましい周囲の人物や、ひと筋縄ではいかない業界人などは生き生きと描かれている。シチュエーションコメディとしては大変に楽しいが、反面、主人公とその恋人の物語としては物足りない。どうしてもヒロインやその他の登場人物の迫力に押されてしまい、彼と彼女の物語から受ける印象や感動が薄いのが残念だった。
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