第一次選考通過作品詳細

『ホップ・ステップ・ガール』 東堂光希

 卒業を目前に控えた小学6年生、4月生まれの泉宮桜子と3月生まれの高梁れいあはクラスメイト。ふたりは親友であり、同級生の柴田新をめぐる恋のライバルであるとともに、両親の離婚によって別々に育てられた姉妹でもあった。同じ塾に通う他校の少年、笹城快に告白されて心が揺れるれいあは、初めて笹城とキスをしたその日、姉・桜子と同居する母・更紗が笹城の父と再婚することになったことを知る。そのうえ、中学に入学した姉妹は、柴田、笹城と同じクラスに。果たしてふたりは、こんがらがった人間関係と心を解きほどくことができるのか……。


評価・感想

 最初は「同じ学年にいる生き別れの姉妹」という「昭和時代の少女漫画みたいな設定」に「?」と思ったが、これもSFやファンタジーにおける設定のようなものだと考え直して読んでみると、文章は達者だしストーリーもおもしろい。登場人物の性格付けも脇役にいたるまでしっかりしていて、とくに奮闘する主人公たちへの冷静なツッコミ役を演じる狭山薬子の可憐さが印象的。全体としては恋愛小説というより家族小説とでもいった趣だが、テーマはたしかに「愛」であり、これもまた「ラブストーリー」には違いないと納得させられるだけのものがあった。

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