第一次選考通過作品詳細
『ベアトリーチェ』 葉山白心(はやま はくしん)
立浪飛鳥は35歳で独身の中学校図書館司書。15歳のときに真っ直ぐな好意を寄せられたのに、素直に応えられなかった鳥羽晟が忘れられず、男性と付き合ったことすらない。その彼女に中学3年生の遠野樹が真っ直ぐな好意を寄せて、「彼氏になる」と宣言する。それを断るために最初で最後のデートをしに樹の家に行った飛鳥は、彼の父親が20年間愛し続けていた鳥羽晟であることを知る。樹は飛鳥に、女癖の悪さで離婚した父親と付き合って傷ついてほしくないと訴えるが、ふたりを止めることはできなかった。飛鳥と晟は互いの愛で心に欠けていたものを取り戻すようになるが、樹はそのショックからか深い眠りについてしまう……。
評価・感想
一途な愛の物語だが、つねにユーモアがあるところがいい。飛鳥は晟を思いつつも、「35歳まで交際経験がないなんて人間としてどうなのか」と自分に突っ込み、友達の由沙に未婚のプレッシャーや不安を嘆く。ストレートな愛情をぶつけてくる樹や、ようやく巡り会えた晟との場面でも、飛鳥の本音のひとり語りが入ることにより、ナルシスティックで気恥ずかしい愛情物語にはならない。男性の好意に素直になれないやっかいな飛鳥、愛情を信じられずに女を渡り歩いてきた晟、真っ直ぐな樹、大らかで理解のある由沙……登場人物もそれぞれキャラが立っていて魅力的だ。
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