第一次選考通過作品詳細

『フレーム』 結城こと

 41歳のヒロイン北野薫は、高校生のときに母と死別し、その後は幼い妹の世話に追われて婚期を逸してきた。いまではキャリアウーマンとして生きているものの、恋愛では経営コンサルタントの雅人との結論のない不倫関係にしかすがるものがなかった。だが、ひょんなひっかけで現われた浩輝というイケメン青年の登場で、彼女の人生はジェットコースターのように突き進んで行くことになる……。


評価・感想

 欠点から先に述べる。登場人物たちの境遇や、シーンごとに「偶然ばったりと出会う」という設定が多く、ご都合主義な点(「事実は小説より奇なり」というセリフは、自己矛盾をおこしている)。そしてラスト、すべての真相が明かされる場面で、「運命の人」が突如の事故で危篤となり、病床で訳知り顔の神的人物が出てきてこれまでの因縁を解説するという部分は、ギリシャ神話をそのまんまなぞったような荒削りぶりである。また、ヒロインが女性としての幸せを犠牲にしてきた妹のキャラクター造型が希薄で、その犠牲に対する父の感情やリアクションも納得のいくものではなかったことも指摘できる。そのような多くの欠点があるにもかかわらず、小説的な感動が多くあり、見逃せない作品だった。おそらく、二次選考に携わる方々にも、その感動は共有してもらえると思ってこの作品を推す。

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