第一次選考通過作品詳細

『二階の恋文屋』 中島隆善

 失恋と失業のダブルパンチに打ちのめされた美春は、ハローワークで見つけた求人「恋文作成のためのお手伝い」に応募する。風変わりな募集広告を出していたのはカフェ「Liebestraum」のマスター永島、彼はカフェ経営とイラストレーターの仕事の傍ら、ラブレターの添削相談に応じていた。恋文添削助手兼カフェ店員として働きはじめた美春は永島の人柄にほのかな恋心を寄せているが、永島には恋人がいるらしい。一方の永島も美春に惹かれていくが、亡き恋人の思い出を捨てられずに美春に対して積極的になれない。誠実で心優しいふたりの、じれったくなるような恋物語を、恋愛相談に訪れた人々の人間模様も織り込みながら、詩情豊かに描く。


評価・感想

 叙景、叙情とも抜群の表現力で、とくにカフェで出される料理の描写が美味い、じゃなくて上手い。こんなカフェがあれば癒されるひとときを味わいたい、と感じた。主人公ふたりのストーリーだけではいささかシンプル過ぎるきらいがあるところを、カフェを訪れた人々のドラマを巧みに織り込むことで、物語にふくらみと深みを与えている。

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