第一次選考通過作品詳細

『妻のブログとブログの妻』 いとよし結子

 ソフトウエアの制作販売会社に務める桜井は、妻、真美子を突然の交通事故で亡くす。四十九日を終えたとき、ひとり暮らしになった桜井の家に2通の葉書が届く。どちらも真美子宛だが、文面は「むーさん」へとあった。彼女は生前、「むーさん」のハンドルネームでブログを書いていたのだ。何も知らなかった桜井は、会社で一緒に働く女性派遣社員の曾根崎や新入社員の久住の助けを借りて、妻のブログの内容や行動を明らかにしていく。妻との数々の思い出と桜井の知らない妻の一面には、たくさんの前向きで優しいメッセージが盛り込まれていたと、桜井は改めて気づく。


評価・感想

 まずは思い出のなかで鮮やかに甦る真美子の姿が、とても魅力に溢れています。優しくて健気で律儀、そして前向き。「ネバネバギブアップ」「月曜日が好き」「本当に手に入れたいものなら手段を選ばない」等々、読み手までもがつい励まされる言葉の数々にも感心しました。ブログやオークション、そのなかでの人間関係のありようもリアルに描かれ、いまの時代ならではの作品に仕上がっています。

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