第一次選考通過作品詳細
『スパイシー・ジェット・シティ』 盲目ロイ
スラム化した近未来のTOKYO。年若い兄妹、秋と遥は病気の母親を抱え、プラトニックな恋人として互いを支え合って生きてきた。しかしいよいよ母の薬代にさえことかくようになり、思い余った遥はバイト先のオーナーに身体を売る。そのショックで道に倒れていたところをスラムの見知らぬ男たちに輪姦され、身も心も壊れた状態で秋に発見された。彼女の心を取り戻すため、ついに兄妹の一線を越えた秋は、さらに遥とともに知事の誘拐を企む。それは彼らを「弱者」として貶めた街そのものへの復讐でもあった。マフィアや政治、マスコミ、警察、伝説の殺人鬼の思惑が交差するなか、刹那的な愛に身を焦がすふたりが辿りついた結末とは?
評価・感想
テンポがよくキャラの立った、リーダビリティの高いクライム小説です。誘拐もののおもしろさに加え、街を構成する、政治や黒社会といった様々な要素をクロスさせる群像劇の構成も興味深い。主役の兄妹だけではなく、脇役たちそれぞれの恋愛の形が描かれるのもおもしろいです。短いスパンで次々に驚愕の事実が放り込まれるので、飽きないです。論理的に納得のいかない箇所や文章の拙いところもありましたが、展開に勢いがあり、それだけノって書いたのだな、とも思いました。
→ 一覧に戻る