第一次選考通過作品詳細

『王子に乗った白馬様』 石岡ナイク

 19歳の会社員、高瀬美月は子供のころから毎晩のように白馬の王子様の夢を見ている。ところがある日、夢のなかで王子は白馬に引きずられるようにして登場する。つらい子供時代や上手くいかない今の現実から逃れるために美月が見ていたその夢は、じつは彼女から現実の恋をする力を奪っていた──神々の住む異世界から美月の夢にやってきていた王子と、王子に乗った白馬はそう告げた。


評価・感想

 「このままでいいのか」という疑問と、「夢」に頼らずには日々を過ごせない女性の不安が、コメディ風味たっぷりの物語のなかにもしっかりと描かれている。王子(?)と一緒に馬に尻をたたかれて、自分に恋する力が備わっているかどうかを明らかにするために試行錯誤し右往左往するヒロインの行動は、最近恋から遠ざかっていると不安を感じている女性なら、笑いながらも共感するところが多いのではないか。見合いパーティの詳細な描写や、とあるイケメン野球選手をめぐっての女たちの駆け引きのシーンなどがとくにおもしろかった。展開もテンポがよく、飽きさせない。

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