第一次選考通過作品詳細
『隻眼の女 』 鎌田 昭成
昭和三十年、上野駅や上野公園周辺(シマ)に浮浪者があふれていた時代。自衛隊を辞めて山口県から上京した悠太は、ひと月余りの職探しにもかかわらず職が見つからず、生き延びるために仕方なく、上野公園に落ち、なけなしの退職金を懐にかかえて浮浪者として暮らし始める。
選評
昭和30年代の上野駅や上野公園に集まる浮浪者たちの姿を思い出せる人は多いだろう。彼らの貧しさと明日をもしれないがゆえの放埒な暮らしぶり、彼らの声やその場の臭気をその傍らを通り過ぎた自分の姿とともに思い出せる人、その後彼らがどのように見えなくなっていったかを思い出せる人も少なくはないと思う。
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