第一次選考通過作品詳細

『菓子ほどにもろく、悪魔なんかにとらわれるな』 中居 真麻

36歳の菜穂は、39歳になる幼なじみの順次朗と友人以上のつながりを続けている。しかしふたりには公に結ばれることのできない秘密があった。順次朗と飲み屋で知り合った真尋は菜穂との真の関係を知らずに順次朗と付き合い始め、ついには結婚を考える。順次朗と昔関係をもったことのある菜穂の中学時代の友人・冴子は、菜穂の知らないところで順次朗の子供・あめを産み育てていたが、母親に愛されていないと思うあめは、売春をしながら父親を探していた……。1975年から2008年にかけての、三世代にわたる色情の因縁物語。


選評

順次朗を取り巻く菜穂、真尋、冴子、あめという4人の女たちの因縁が、世代を振り返る構成で書かれていて、ミステリー小説を読み進めるような感覚でページをめくりました。次々に明らかになる男の弱さと女の歪みが、現代社会の闇を描き出しているかのようにも感じます。決してハッピーエンドではない終焉が心に重くのしかかりますが、ここまで人間の暗い部分を描き切れる筆力はすばらしいと思います。

一覧に戻る