第一次選考通過作品詳細
『オキナワ・ダウンタウン・ブギウギ』 荻野 美和
崩壊間際の東京での家庭生活から逃れるために、そして16歳のときに生き別れとなった父・比嘉孝三を探すために故郷の沖縄に渡った比嘉努は、幼なじみである山原の協力を得て、父の捜索をはじめた。手がかりとなるのは若き日の父の写真一枚にすぎなかったが、捜索を続ける中、努は、占領期の沖縄の空気と父の青春の名残が残る金武にこそ父はいるのではないか、という思いに至る。確証があるわけではなかったが、金武の新開地に足を踏み入れた努は、そこで米兵向けのショーパブ「ブラックマリア」のトップコールガールのマーサと、その付き人の少女・リーノに出会うことになる。
選評
端的な言葉でコザの空気や金武の雰囲気を見事に捉え、書き手の思い描いた情景を読み手に伝達させている。そこに冗長な表現は一切ない。このような表現が可能なのは、書き手が沖縄のこと愛し、深く理解しているからなのだろう。金武の新開地には行ったことがないが、この作品は、その空気や匂いといったものを見事に伝えている。
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