第一次選考通過作品詳細
『雪の晶 -二つの恋の鎮魂から-』 島本 青玄
大正時代の話。雪深い山奥で独り暮らしを続ける老人・炭焼きの熊吉は、若いころ大地主の娘ノブと駆け落ちして、成り行きで殺人を犯してしまい、逃れ逃れて今の土地で生きることになった。だが、ノブは死産の後亡くなってしまい、孤独の中に数十年が過ぎた。ある日、熊吉の小屋に逃避行の学生が訪れる。彼は、村の有力者の娘で今は軍人の妻となっている女と出奔して、この村で落ち合うことにしていた。熊吉の過去と重なる、若い二人と熊吉の出会い。その結末は……。
選評
雪国の物寂しい情景と連れ合いをなくした老人の哀感がマッチして、独特の雰囲気がかもし出されている。現代もので若者が主人公の作品が多い中、熊吉老人の存在感と古風な設定が印象に残った。熊吉とノブの物語には引き込まれたが、残念なことに、若い二人の方には熊吉ほどのリアリティがなく、陳腐な感じを受けた。
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