第一次選考通過作品詳細

『BLUE HEAVEN ~空の青、海の蒼~』 安東たけし

タツヤはバリ島のレストランで、1人の女性を聞き手にして、今までの出来事を話し始めた。大学4年の夏のこと。就職先が内定した親友同士の合コンで、タツヤは香織と出逢い、つきあい始めた。2人の関係は社会人になっても順調だったが、入社3年目、タツヤは仕事に忙殺されて、香織とのデートもままならない。香織はタツヤにドタキャンされた直後、偶然、タツヤの親友アツシと会う。タツヤのドタキャンのたびに香織がアツシを呼び出すうち、2人はお互いを好きになっていく。香織はタツヤと別れ、アツシがタツヤに香織とのことを話すはずだったが、その前にアツシは事故死した。アツシはタツヤのサーフイン仲間でもあった。アツシがバリ島へ波乗りに行くつもりだったと知ったタツヤは、アツシのサーフボードを持ってバリ島へ向かった。


選評

文章も人間関係も会話も風景も、明るくてポップでノリがいい。絵文字1つだけの謝りメールや、「ボクの脳内CPUはかなり性能が悪いらしい。それともOS がウインドウズ98なんだろうか」と、いかにも今の時代の若者らしい表現に感心した。軽薄なだけでもない。20歳そこそこならではの、がむしゃらで、頭の中がどしゃぶりのような恋愛と失恋の様子がしっかり描かれている。また、構成の面でも、細かな工夫が見られる。物語をタツヤ、香織、アツシのモノローグで綴ることで、三者三様の気持ちの揺れや言い分、苦しみがストレートに伝わってくる。冒頭、中盤、クライマックスに、印象に残るダイナミックなサーフィンシーンを置いて、ストーリーをうまく盛り上げてもいる。ただ、親友の事故死が話の展開の軸というのは、ちょっとありきたりで惜しい。ぜひもう1作、人が死なない作品を読んでみたい。

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