第一次選考通過作品詳細

ハッピーエンド』 大川 恵

家庭教師先の母親に恋した大学生の話『児童公園』、クーラーの取り付け工事に来た青年に一目惚れした女医の話『居酒屋』、バツイチ女子大生の恋『本屋』、高校時代の片思いの相手に会いたくて司法試験を受け続ける主婦の話『試験場』、図書館でバッタリあった高校生二人が恋に落ちる『図書館裏』、妻に先立たれた男が息子の部活動を通じて知り合ったシングル・マザーの音楽教師にひかれてゆく『駐車場』、別れた不倫相手と泊まるはずだった旅館に妻が現れる『弓ヶ浜』以上、計7編の掌編と短編からなるオムニバス。


選評

ささやかな日常のなかでの、さまざまな恋の場面・愛のかたちを切り取る手際は鮮やか。各作品とも異なるシチュエーションとキャラクターを、ときに甘く、ときに苦く、ときにシリアスに、ときにユーモラスに、と巧みに描き分けており、どれをとっても完成度は高い。確かな表現と人間への洞察で読ませる大人の読み物。 短編集はこうした賞の応募作としては異例かもしれないが、抜群の表現力を買ってあえて推す。

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