第一次選考通過作品詳細

『十四人目の男と私』 粒山吉樹

平凡な毎日を飽き飽きして過ごしている38歳のOL、由加は、新しい出会いをもとめているが、なかなか実現しない。そんなある日、彼女は夢をみる。それは、「明日、14人目に出会う男性が運命の人です」というお告げであった。だが、その翌日、14人目に出会った男は、由加が生理的に受け付けないチビ、ヤセ、毛深いキモ男の洋介だった。とっさにその男から逃げる由加だったが、夢の効果だろうか、その後も強引な偶然によって、由加は何度もそのキモ男と出会う。しかも、キモ男は由加のことを一途に恋している様子。やがて由加は、キモ男の思いにイヤされ、その思いを受け止めることを決意する。


選評

生理的に受け付けられない容姿の男性を、女性はどこまで愛せるかという切実なテーマが深く掘りさげられていた点は大いに評価できます。ただ、欲を言えば、洋介と匿名のメールでコミュニケーションをとりながら、現実の合コンでも洋介と出会って、バーチャルとリアルの二重のコミュニケーションをとりはじめるあたりはとても面白いのですが、それに比べて、そこに至るまでの前半のストーリーが弱いのが気になりました。できればもっと早くに二重のコミュニケーションになる状況を作っておきたかった気がします。また、由加が洋介の思いを受け止めることを決意する場面でも、クライマックスらしいアクションシーンなどを設け、さらに盛り上げるべきでしょう(例えば、何らかの危機に遭遇したヒロインを救ったのが、これまた偶然に洋介だったとか……)。あと、文章表現にもややつたなさを感じたのも気になります。ただこれは、わざとそうしているのか、それともそうなってしまったのか、判断がつかないほど微妙なポイントですが。

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