第一次選考通過作品詳細

『禧(さいわ)い棲むと人の言う』 清水みのり

海難事故により離島に流れ着いた若いOL蓮子。救われた際には自らの記憶を取り戻せず、暢気な島の医者の好意に甘えた生活を送っていた。しかし、自分が元カレの「殺人」という恐ろしい計画を立てていたことを思い出し、慄然とする。島での暮らしは心地よく、医者への感謝の気持ちもあいまって、定住したいと思いはじめる彼女だが、華やかな都会暮らしの快楽と、会社での「仕事」という責任を捨て切れない。留まるべきか、去るべきか、と悩む蓮子は、結局去る道を選ぶが、島にはたびたび訪れることとなる。その間、島と本土では恋がらみの奇妙な事件が二人のもとに次々と舞い込み、医者と蓮子による奇妙な合同捜査が始まる。その過程で、二人の感情は共感し始め、恋ともつかない感情が芽生える。恋人に捨てられ、自暴自棄になっていた蓮子は、周りの人々の協力を得て、離島の医者との親密さを手探りで深めていく。


選評

「恋愛」と言うのは難しい。特に、若いうちは単なる「楽しいこと」で済むが、何となく味気ない。本作は、恋愛とミステリ的要素が上手く絡み合っており、非常に楽しく読めた。常道を踏みながら、サプライズもあり、小説としてはかなり出来がいい「恋愛」がらみの連作短篇集。

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