第一次選考通過作品詳細

『きた娘』 桜庭 豪

12月、東京で大学生活の最後の年を過ごしていた詩蔓は、理由も言わずに金沢に就職してしまった一年先輩の庄介が忘れられず、二人の共通の友人・三河から教えられた地図を頼りに庄介の住む社員寮に出かける。8か月ぶりの突然の再会にとまどう庄介、思いが募ってきちんと話ができない詩蔓、焦れったいまま二晩が過ぎ、三日目にフリーターをしていた三河までやってくる。社員寮の一室で、三河の詩蔓への愛、詩蔓の庄介への未練、庄介と三河の友情が絶妙なバランスで交錯する。そして三河は原付で日本縦断の旅に出かけ、詩蔓は自分の気持ちにピリオドを打つ。


選評

テンポのよい会話、随所でくすぐりを利かせた表現、ポエジーとユーモアが混在した文章で一気に読ませる。天真爛漫な詩蔓、生真面目だがどこか頼りない庄介、バイタリティーあふれるトリックスターの三河、三人の若者のキャラクターもしっかり描かれている。伏線もクライマックスにきっちり活かされている。

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