第一次選考通過作品詳細

『オカンの嫁入り』 めいそい

結婚して間もなく夫を失い、女手ひとつで娘を育て上げた看護師「オカン」陽子、その娘で、勤務先の同僚のストーカー行為による心の傷を癒し切れていない「あたし」月子。母一人娘一人で暮らす家に、ある晩、酔った陽子が「捨て男」(研二)を拾ってくる。何がなんだかわからないまま月子たちと同居を始める研二。母・陽子は彼と結婚するつもりらしい。とまどう月子だったが、やがて研二の気さくな人柄と陽子への真摯な思いに母の再婚を受け入れていく。 母娘の家主兼後見人・サク婆、月子の恋人・村上センセイ、月子の愛犬・ハチ、魅力的なキャラクターによって演じられる人間ドラマが月子の目を通して語られる。


選評

全編を通して関西弁の口語で語られる異色作。陽気な「オカン」の唐突な再婚話に振り回される周囲の人々というドタバタ・コメディになりがちな設定だが、「笑いと涙の人情喜劇」という紋切り型にはおさまらない詩情あふれる仕上がりで、そのユーモアとペーソスは関西ローカルの枠を超えている。ストーリーも、月子の心の傷、研二の過去、陽子の秘密などが徐々に明かされていき、最後まで飽きさせない。 表現においても、関西弁のリズムを生かしながら、その勢いに流されず、各場面の情景を繊細に描き出している。各登場人物(+犬)も細やかに書き込まれており、どの場面をとっても人間(+犬)への愛おしさを感じさせる。

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