第一次選考通過作品詳細

『永遠の薔薇の祈り -ピエール・アベラールとエロイーズの恋の物語』 岡田康江

12世紀に「弁証法の騎士」といわれた哲学者アベラールは、「丘の麗人」とうたわれた若き才女のエロイーズに恋をし、家庭教師を買って出る。やがてふたりは情欲の限りを尽くす仲となるが、エロイーズが妊娠してからは一転して運命は暗転。アベラールが哲学者であるため、結婚が許されず、ふたりは極秘結婚をするのだが、エロイーズの保護者である叔父の怒りを買って、アベラールは虚勢されてしまう。その後、ふたりは修道の道に入るが、エロイーズは、アベラールと交わした肉欲の快感を忘れることはできなかった。すでにエロイーズの肉欲に応えられなくなったアベラールは、哲学者の道を捨てて、聖職者に転向したことを必死に訴え続ける。中世という現代社会から見れば暗黒に見える時代に浮かび上がってくる、グロテスクなまでの生命力。人間の愛と情欲に迫った意欲的歴史ロマン!


選評

「アベラールとエロイーズ」の書簡集をもとにした創作恋愛小説。シェーファーの『アマデウス』のように大胆な解釈が施されているわけではなく、原典を“ほぼ”忠実になぞっているように見えますが、単なる歴史好きには書けない、ずっしりとした重みのある物語になっています。とにかく先入観なしに読んでいただきたいと思います。

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