第一次選考通過作品詳細

『一角獣の夏』 桐島 留衣子

画廊に勤める理央は、画廊店主に連れていかれた高級レストランで大会社の御曹子、界と出会い恋に落ちる。手の届かないはずの世界に住む界。そんな界が理央に近付いた理由は、理央がとある女性に似ていたからだった。幼馴染みの初音と共謀し、理央を利用して昔の傷を消そうとする界。理央は自分が界にとってある女性の身代わりにすぎないことに気付きながらも深みにはまっていく。界は理央を利用して過去の呪縛から逃れようとするが、自ら張った罠に自分も巻き込まれ計画は狂っていく。界もまた、理央を一人の女性として愛するようになり、理央に自分の秘密を打ち明ける。しかし、二人の思いが通じたかと思ったのも束の間であった。


選評

幾重にも張り巡らされた伏線が絡み合って謎が解かれるエンディングは圧巻。現実離れした設定と細かく配置されたエピソードが溢れかえるようだが、しっかりとしたストーリーの組み立てにより、上質の大人のファンタジーに仕上がっている。浮わついたように見える世界観も、ストーリーが進行するとともに自然となじまされ、違和感を覚えさせないレベルにまで読み手を惹きつける。時折混ざる官能的な文章が奥深さを出している。

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