第二次選考通過作品詳細

『フォビア』 相原 光

フォビア……この恋は呪われている!
若きお話売りのチェイスと、美しい娘・アッシュ。出会ってすぐに恋に落ちたふたりは、ふたりだけの楽園で、お互いだけを求めて1年を過ごすが、あるときアッシュが原因不明の熱病に倒れる。占い師は告げた。これは恋の呪いだと。そして、アッシュは7日後に死ぬ……と。しかしその予言は、チェイスがかつて人々に語って聞かせた「物語」そのものだった!
時は近未来。長く激しい戦争を経て、世界の成り立ちは変わり、すべての書物が封印された。そして「物語」もまた本の体裁をとらず、「お話売り」の資格を持つ者だけが公に語り、伝えていくものとなっていた。そんな世界で、チェイスは奔走する。アッシュの命を救うため。ふたりの恋の呪いを解くため……。期限は7日だ!


町口
この作品の設定は、ラノベやアニメ、漫画なんかにありがちな設定なんですね。物語的にいっても冗長なだけ。だから僕は積極的な評価はできなかったんです。
三村
私はかえって文芸ものと考えればこれはありなんじゃないかな、と思って。これでキャラを立ててライトノベルっぽくしたら、RPGっぽくなるけど逆に文芸ではあり得ると思った上での△ですね。
諏訪
ライトノベルを擁護される立場の方がいらっしゃるだろうと思ったので、今回、僕はリアリズムを擁護する立場に立つつもりで来ました(笑)。もちろんいろいろな小説でいろいろな水準のリアリズムがあるわけですけど、それでもこれはキツいなあ……。筋としても本当にありきたりな感じがしますね。
岡部
私は前半、長くて飽きたので、△かな×かなと思っていたんですが、後半の展開がいいかなと思い、○にしたんです。あと細かい部分に共感できる記述があったので。アニメにするには観念的な小説で、もっと面白いキャラがないと難しいかな、とは思います。
彌永
私は一次で担当したんですが、この人は、この作品じゃなくても、書きたいことがいっぱいある人なんだな、という印象が大きいんです。とりあえず熱に浮かされるような感じで書いている感じはあったんですけど、読んでいて引っ張られる力を感じる、この人が今後どんなものを書くのかなという期待ができる、という意味での○かな、と。
──○をつけていらっしゃるのは全員女性なんですよね。
神田
私はこれは映像にしてみた時に面白いんじゃないかなと思いましたよ。頭の中で映像を思い浮かべながら読んでいて、「未来少年コナ●」の舞台で大人の男女のラブストーリーが進んでいるっていう感じがして。リゾートっぽい「楽園」の砂浜あり、イ●ダストリアみたいな「ビッグ・シティ」あり、てな感じでロケをしても面白いし、セットを作っても面白いし、と思って。あと言葉のリフレインがすごく上手く使われているので、映像だけでなく音楽的なリズムの意味でも面白く読み進められるし、全体的によく仕上がっていると思いました。
町口
ポテンシャリティという面ではある人だと思いますけどね。
横須賀
僕の場合はブラッドベリの「華氏451度」と、それから今、神田さんが引き合いに出されたアニメの原作(アレクサンダー・ケイの「残された人々」)などなどのイメージがずーっとつきまとってしまって、読了まで新しさを全く感じられなかったというのが本音です。けれども作家としての力量が無視できなかったので△にしました。

もう少しボリュームがコンパクトだといいですね。私も前半で飽きて、一回読むのを休んで、後半読み始めたら続いていったので。全体的に凝縮してもいいかな、と。
三村
刈り込むと文芸っぽくなるんじゃないかなと思うんですけど。そうなったときにいいかどうかはわからないんですけれど。
町口
タイトルは変えた方がいいですね。フォビアは、もともと特定の事物や活動、状況に対する病的嫌悪という意味ですから、否定的な単語です。英語がわかる人はまずいと思いますよね。英語圏の人間だったら絶対に付けない。
横須賀
そうですね、考えて付けていないですね。ちょっと「恐怖症」など強い嫌悪、侮蔑的なニュアンスのある言葉です。
町口
たとえばホモフォビアは同性愛者に対する恐れという意味ですよね。そこには差別といったニュアンスの問題が生じる。いい作品だし、二次通過に選ぶことは反対しないけど、タイトルだけ気を付けて欲しかったですね。

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