第一次選考あと一歩作品詳細
選考委員:ボブ内藤/方南ぐみ
『フラッシュ・バック』 ナナ
「ほぼ実話」として描かれたのは、風俗嬢の物語。ものすごいパワー、疾走感に圧倒されました。ただ、あまりにすごいパワーなので、主人公が殺人を犯すあたりで振り回されて最後までついていけませんでした。今度は、パワーはそのままで、巧みなハンドルさばきで読者を思わぬところへ連れていってくれるような作品を書いてほしい。きっと、すごい作品になるはずです。
『未完成葬送曲』 麻井壬森
同性愛、不治の病という設定に工夫や新しさは感じなかったけど、優れた文章力、表現力に思わず引き込まれた。登場人物のキャラクターもそれぞれが魅力的で書き分けがキチンとできており、セリフにも説得力がある。コミカルな描写の中にも随所に作者の深い教養を感じさせる箇所があり、他の作品も読んでみたいと思わせるポテンシャルを感じた。
『荊の冠』 正木陶子
登場人物それぞれの視点から章を分け、一人称で物語を語らせる文体が面白い。が、登場人物があまりに多く、しかも複数のラブストーリーが複雑にからんでくるので、物語を追うのがかなり難しい。中にはキラリと光るエピソードがあるだけに残念。文章力は高いので、もう一度、しっかりとした構成を立てた作品を読んでみたい。
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