第一次選考通過作品詳細

『テネシーワルツ』 木林 森

昭和30年代の日本の田舎町。泥棒の嫌疑をかけられて怒った耕介少年は、遊び仲間三人と少年探偵団を結成する。犯人を捜して森に入った三人は、そこで年上の美しい少女に出会う。空腹で盗みをはたらいたと白状する彼女のために、三人は食べ物を運び、交友を深めていく。やがて耕介たちは少女がなぜ森に隠れていたのか知り、彼女を守ろうとするのだが、探偵団のひとりが親の気を惹くために密告し、あえなく彼女は警察に捕まってしまう。


選評:三村 美衣

『市場ボーイズ』という作品(ドラマ化もされた)のある既存作家。
妻を病で亡くした初老のジャズサックス奏者が、子供の頃の思い出や妻との出会いを回想する。ラブストーリーよりもむしろ、魅力は昭和三十年代の子供たちや家族の描写だ。家族が肩を寄せ合う、貧しくも楽しい耕介の家族、ジャズのレコードを耕介に聞かせてくれる髪結いの亭主状態の豆腐屋、親子の間に溝が生じはじめている家族……。時代が急速に移り変わっていく当時の世相が子供たちと家族との関係にみごとにあらわれている。テネシーワルツや夏椿といった小道具の使い方も上手だ。ありきたりではあるが、ノスタルジックな風景が心地よい、泣かせのツボを心得た作品だ。

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