第一次選考通過作品詳細

『ジンジャーX』 堀口 りさ

バブル期の終わり〜現在の東京を舞台に、女子中学生〜女子大生の日常を描く。
主人公・茜はどこにでもあるような恵まれた家庭で育った、私立の進学校に通う中学生。友人達の中では真面目な方であるが、援助交際、ドラッグ、レイプなどを経験する友人達との付き合いの中でいろいろと遊びも覚える。しかし茜は物の豊かさでは決して満たされないことを知り、本当に大切なものは何かに気付いていく。そしてすれ違いの末ようやく同級生の勉との結婚を決め、幸せを感じた矢先、勉は飛行機事故で亡くなってしまう。茜は夢の中で彼の温もりと不思議な心の充足感を覚え、彼の子供を産むことを決意する。


選評:岡部 優子

素直な書きぶりで好感が持てる。必要以上に悪く見せようとも良く見せようともせず、現代社会の中で思春期を送る少女たちの等身大の姿を描いている。
また、現代社会の問題点や少女たちが内面に抱えているものをきちんと真面目に考え、少女達の目線から描いていて、競争社会における情緒的欠陥、満たされない思い、感情を殺して優等生を演じていることなど、うなずけること・共感できることが多い。こういう作品は、うまくはないかもしれないけど残したいと思う。
勉強のできる兄と弟をかわいがって茜には目をかけてくれない母親との関係、親からのプレッシャーなど、友達との世界だけでなく家族と少女達との関係もここには含まれている。
うまく遊んでいるように見えた大人びた不良少女・百合は、英才教育を受けた人間のゆがみを持った自己中心的な男に溺れて、彼の子供を堕ろして心身ともに傷ついてしまう。
他の友人達も、金持ちの男ばかり追いかけたり、薬物に溺れて壊れていったり、それぞれの人生を生きていく。
そんな中で茜は、親の事業が失敗して苦学するが地に足の付いた生き方をしている勉の温かさが自分にとってどれだけ大切なものだったかに気付き、ようやく心の安定・安心を得るのである。

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