第二次選考通過作品詳細

『約束』 角皆 優人

フリースタイルスキーの草創期、1980年代のカナダ・ウィッスラーが主な舞台。モーグル選手トオルは、カナダの女性選手デイヴィと恋に落ち、それぞれの競技人生においても二人揃って頂点を極めようとしていた。ところが世界選手権の前夜、突然デイヴィは競技の棄権をトオルに告げて遠征先から姿を消す。優勝候補と目されていたトオルだが動揺のため大失敗を喫し、またデイヴィへは一向に連絡が取れなくなってしまった。さらには競技中の大怪我で選手引退を余儀なくされたトオルは、日本に帰国し結婚するが離婚。スキー雑誌の編集者として再び訪れたウィッスラーで、偶然デイヴィの失踪理由を知ったトオルの前に現れたのは……。



私はつい、わかりやすいもの、読みやすいものがいいと思ってしまい、映像もできやすいのかな、ということで選びました。万人の共感が得られやすいテーマのような気がしますし。個性とか文章の味わいとかは抜きにして、今ベタな恋愛映画が受ける感じがあるので、ちょっと選に入れてみました。ちょうど冬季オリンピックも近いのでそろそろスキー盛り上げていってもいいかな、と(笑)。
三村
でも本当に「ある愛の詩」なんだよね。それも明かされているというところがずるいっていう。
神田
こんな長い長いラブレターをどうもありがとう、って感じで。あとナラティブが弱いかな、ちょっと語り口ベタベタしすぎなんですよね、これ。

全作品を読んでいて思ったんですけど、外国人の主人公ってみんな書けないんだなあ、と。まあ当たり前なんですけど、必ず日本人という設定になっていて、そういうものかなと思いながら読んでいたんですけど。
──横須賀さんは○なんですよね。
横須賀
上手かったし、わかりやすいですよね、甘くて。ただ次作はどうなんだろうという不安はありますけどね。これ自体、作品としてはいい。△にしようかどうかどうしようか迷ったけど、好みによってわかれる作品ですね。
三村
「約束」と「SONOKO」は同一のテイストといえるでしょう。私が「約束」のほうがちょっといいと思ったのは、単なる好みかな。どっちも上手なんですよね。上手で得意ネタが入っているから残っちゃうという。でもあれかな、「SONOKO」が時代物なので古さが気にならないのに比べたらこれはちょっと……。
神田
そうですね、70年代どっぷりって感じ(笑)。時代の空気感が出てるっちゃ出てるんですけど、中途半端に古いかも。

ちょっとおじさんの話を聞かされているみたいな。
三村
しかも美化しているでしょう、みたいな。
神田
でも読んでるとモーグルの草創期を築いた人なんですよね、この人自体はすごい人だと思いましたよ。やはり当時のスキー業界のこととか、スキーの上から見た雪の飛び散る風景とか、リアルだったし。
三村
そこの面白さですよね、そういう意味でも「SONOKO」と一緒なんですけどね。

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