第二次選考通過作品詳細

『星夜の贈り物』 小林 ゆりす

保育士の江里子と、大学助教授の創造の間に生まれた夏織が、七夕祭の夜、不慮の事故で亡くなった。形見の七夕の短冊(考古学)だけが見つからない。その後、夫婦は離婚し、各々新しい恋のようなものをする。2人は事故に会いそうになるが、その度に夏織が現れ救う。短冊も夏織の手引きで発見され、最後は「メリーゴーラウンドで」との夏織の言葉を受け、二人は再会し共に生きることを決める。


町口
これは僕が選んだんですが、インパクトはないものの、小説が好きで好きでたまらないという気持ちで書いたというのがあって、そこらへんだけなんですよね。僕が選んだ4作品のうちの4作目ですね。
神田
この人文章自体はすごいうまいんですよ。子供の描写なんかすごく可愛い。つぶらな目で手がぷくぷくしてて、というところまで浮かんでくるくらいなんだけど。だけどラブシーンが全部ハーレクインロマンスみたい。「シルエットが重なっちゃ」いかんだろう、しかも二回も! って感じでした。あとお父さんのタイムカプセルはちょっととってつけたようで、お母さんの短冊は綿密に伏線が用意されているので、トリックとしての弱さが気になりましたね。
三村
タイムカプセルは何で出てきたんだろうって思った。
神田
あと一人分で埋めているのも変でしょう。
三村
そうだよね、あれは幼稚園とかでみんなで埋めるんだよね。
町口
映像喚起力の点でいいかと思ったんだけど。描写力があるから。総合的なインパクトはないということかな。
諏訪
あと離婚経験者から言わせてもらうと、こんなことで復縁するんだったら苦労はしないよ。
神田
生身の愛おしい子供がいてもやり直そうということにならないわけだから、ましてや死んだ子供のために、って感じですよね。
三村
子供いないんだからやり直さなくていいじゃんって思った。
神田
しかも二人とも新しい相手とかなり引き合ってたのに、パッとあきらめちゃうのにも……。
岡部
そのあたりの葛藤が弱いですね。
諏訪
二人が望んだわけでもないのに、導きによってくっつきました、という話で、葛藤がないというのはまさにその通りですね。
三村
別れるまでに、娘が死んだのが辛いからお互い傷つけ合ってるという描写があれば……でもそれでもダメかな、ありきたりになるかな。
町口
あったらラブロマンスじゃなくなるかも。
横須賀
でもこのままじゃまたすぐに別れますよね。
岡部
ひとつだけ疑問だったのは、スガワラという用務員さんがお願い事を知っているというのをお母さんは聞くわけですよね。スガワラさんが知ってるんだったらその時点でお母さんは聞かないのかな、って。
町口
ファンタジーとして読めばそういうキャラもありかと。
神田
スガワラさんは知ってるけど何も言わない謎の道しるべ、みたいな。
三村
そうそう。途中に立ってる謎だけだして答えは教えてくれない、という。
岡部
それにしてもスガワラさんが知ってるってことを江里子さんが知らないようにすればよかったと思いました。

私は、美しく書こうとしすぎているのが途中でわかってしまって、ああ泣かせようとされてるな、って引いちゃいました。
三村
泣けないですよね。メリーゴーラウンド回っちゃうよな、と思ったら回るし。

としまえん辺りのイメージですよね。映像喚起力があるのはわかるけど、自分は好きじゃないというかよくある話かな、と。

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