第二次選考通過作品詳細

『神様よりいい男』 杉山 未来

両親の離婚を機に母と二人暮らしをしていた主人公、咲子は、母親から愛情をまったく与えてもらえず、そのさみしさを男性との体のふれあいに求め、さらに心身ともにぼろぼろになっていた。ある日夕立の最中に現れた男性、マモルの家にころがりこんだ咲子は、初めて真摯で誠実な男性を見て、本当の安らぎを知るようになる。一緒に過ごすこと1週間、咲子は家族ですごしたもっともあたたかい思い出の場所、お墓にマモルを案内し、思い出の墓参りの様子を伝えようとするが……。実は咲子は1週間前に自殺し、このお墓に眠っている本人だった。皮肉にも死んだあとに、日常の安らぎを得て満足した咲子は現世での感謝の思いを胸に、やがて消えてなくなってしまう。この世とあの世の中間地点で起こる、人生最後のとっておきのプレゼント。


町口
斉藤マモル君──こんな性格のいい男はいないよ。でもいい話ですね、ちょっと漫画っぽいけど。
神田
すごく平凡な話が、最後のオチで貴重に、輝いて見えるというところがいいかな、と。個人的には、身近にいるといいな、こんなガンダムが大好きな普通の男の子って。萌えちゃうかも(笑)。ディテールもいいし、本当に平凡さが美しいんだけど、これ、最後がなかったら単に平板なストーリーですよね。
諏訪
そう、それが最後までわからないというのが、ね。
神田
わざとわからなくしてるんだと思うんですけど。タイトルもいいですよね。けど、亡くなってからの一週間という設定はそんなに斬新ではないかも。
町口
でもやっぱマモル君と居候する女の子、キャラクターは両方いいよね。
──×の岡部さんのご意見は?
岡部
死ぬ前に知らなかった人との話だけで終わっちゃってて、死ぬ前にいろいろあったはずなのに、死ぬ前に知っていた人との折り合いはつけなくていいのかな、と、そう思ってしまって。
諏訪
最後に「おっ」という驚きは確かにあるんだけど、それまでの構成がこれでいいのかという気はしますね。この題材で書くなら、天から降りてきて、あと一週間でタイムアップだと最初に示すサスペンス仕立てになるはずなんだけどな。
久次
一週間を題材にするのならばわたしもそう思います。
町口
僕が気になったのは、最後のオチに出てくるタイの老人がまるっきり日本人じゃないですか。この作品は、何か共同体の中ですべてが処理されて優しさが生まれる、みたいなそこが嫌なんです。たとえば日本語がぺらぺらなタイの老人が出てくるとかの方がよかった。要するに共同体に外部をつくる、その方が作品の構造としてよかったかなと。

私もキャラクターがよくて、最後の直前まで私は好きだったんですけど、亡くなって一週間でお墓には入らないよな、って、それだけでリアルがガチッて崩れてしまって。日本の話で、仏教のお墓の描写にもなっていて、亡くなって一週間後で、しかもその前にお墓にいたというのが納得できなかったんですよ。早くても四十九日とか、お墓が遠かったり事情はあるんですけど、それでも三、四日は家にいてそれからの話じゃないですか。だから舞台となる一週間の区切り方が残念だった、浮遊していて神様に来いといわれて……というならわかるんですけど、一週間前に死んだというのが納得できない。それまでがすごく共感できる男女だったから残念だった。これがもし外国で土葬の国だったらありかもしれないけど、日本人だし、法律的にもおかしいし。本当に大事なところで「?」になってしまったのが惜しいです。

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