第二次選考通過作品詳細

『愛あるところへ』 羽生 尊子

「愛している」なんて言えない歩と、彼女をめぐる女と男のラブストーリー。秋という女性との出会い、ほのかな愛、そして死。彼女の死を乗り越え、啓介と結ばれ、生まれた子に秋の名を……。横浜、宇部、伊豆などを舞台に、泣かせる恋物語。


町口
これは一次で僕が選んだんですけど、どうしようかと思った時に、この作品のロケーションがいいかなと思ったんですよね。横浜、宇部、伊豆と、映像化した時にいろいろ風景が変わるじゃないですか。観ていて飽きないと思った。

シーンはともかく、私はこれは自殺するところに共感が付いていかないです。そこまでする問題じゃないと思います。
神田
そこまで禁忌の意識があれば、お姉さんがいるのに机の上に日記を置いていかないでしょう。
三村
この作品に限らず全体的にそうだったんですけど、自殺することに著者が酔ってるんですよね。それが嫌で嫌で。自殺して美しい、じゃないだろう、と。後に残されることさえ、美しく終わらせちゃう感じがして。

美化されている自殺がすごく多かったですね。
町口
あと、男性キャラの啓介というのに魅力がないのは残念でしたね。もうちょっとキャラ立ちをしてほしかった。
三村
こんな男だったら女の子の方がいいだろう、と。
町口
気持ちの天秤ってやはり傾きすぎたらまずいと思うんですけどね、僅差じゃないと。選評にも書きましたが、エンディングもよくない。一年後、というのは余計です。
三村
自殺した子の名前を自分の子供に付けるなって突っ込みたくなりますよね。そこまで含めて自殺したことが美しいと思ってることになっていると。それを美しく描いてもいいんだけど、もっと自覚をもって書いて欲しいなと思います。
横須賀
便利な万能ツールのようなものですね。
神田
とりあえず終わらせられない小説を終わらせるには万能のツール。
三村
本当にいっぱい死にますよね。選考のためにいっぺんに何作も読んでいるので、余計に安易だと思ってしまうということもあるのかもしれませんけど。自殺なしでストーリー作れるとポイント高いです(笑)。

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