第二次選考通過作品詳細

『ビルド・ア・ラヴ・ネスト』 栗原 彩乃

少し変わり者の周二と、父親から虐待を受けている1つ年下のコウとの出会い。舞台は南の島の高校から東京へ。そしてコウの父親の暴力から逃避行の末に2人は……。聖書のノアの箱舟をモチーフにした珠玉のラブストーリー。


神田
これは、そんなに嫌な点はないけど、印象に残る点もなかったというのが率直な感想ですけど、もし嫌なところを挙げるとすると、虐待の扱いかな。虐待とかレイプとかを小道具的に使う人って結構多くてうんざりなんですけど。どこまでこの作者は虐待にリアリティがあるのかなという疑問があって。何かさらっと読めてしまうし、虐待を受けている女の子もさらっとしているし。体に傷はあるけど、心にはなさそうですし。だから×をつけるほどのものではなかったのかもしれないですけど。

構成的には破綻したところがあまりなかったかな、と。惹かれていく過程とか、二人が一緒に暮らしていくちょっとした幸福感みたいなのに、気持ちがついていかない部分はなかったので。ただ虐待と沖縄が登場するのが気になると言えば気になりますね。沖縄って大らかだからそういうのがなさそうに見えるのに、楽園チックなところと対比させたかったんですかね。
町口
そう読むと面白い作品だと思う。僕はこの作品の評価に関しては、選評に書いた通り。
横須賀
もし対比で描こうとしているのであれば、もっと違う書き方があったと思います。
三村
私はどこかひっかかる部分が何かもう一つ欲しいと思いました。虐待とかには特に重きを置いて読まなかったんですよ。
町口
テーマとしては、生まれたことの存在意義だと思うんですけど、そこら辺をもっと掘り下げていけばいいと思いますね。ポテンシャルはあると思う。この作品自体ではどうかはわかんないけど。この作家はまだまだこれからいろいろ書けると思う。
三村
上手ですよね。上手だからスルーしたんだと思いますし。
町口
同人誌なんかでありがちな気もします。そのなかでは上手い部類にはいると思うんですが。
横須賀
ありがちなパーツを使ったのが良くなかったですね。

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