第二次選考通過作品詳細

『ジンジャーX』 堀口 りさ

バブル期の終わり〜現在の東京を舞台に、女子中学生〜女子大生の日常を描く。
主人公・茜はどこにでもあるような恵まれた家庭で育った、私立の進学校に通う中学生。友人達の中では真面目な方であるが、援助交際、ドラッグ、レイプなどを経験する友人達との付き合いの中でいろいろと遊びも覚える。しかし茜は物の豊かさでは決して満たされないことを知り、本当に大切なものは何かに気付いていく。そしてすれ違いの末ようやく同級生の勉との結婚を決め、幸せを感じた矢先、勉は飛行機事故で亡くなってしまう。茜は夢の中で彼の温もりと不思議な心の充足感を感じ、彼の子供を産むことを決意する。


神田
作者の方の経歴が華やかなので期待して読んだら、結構がっかりだったかなあ、私は。
三村
私、この作者の年齢探ろうと思ってインターネットで検索したんだけれど、見つけられなかったんですよね。

モデルだから年齢隠さなくちゃいけない事情があるのかもしれませんよ。
神田
でも書いてある時代のリアリティを信じるとしたら、だいたいわかりますよね。自分と同世代かちょっと下くらいかなあ、と。10代20代の子がバブル期に憧れて書いて、これはないだろうと思うので。
三村
結婚、妊娠、出産に至るまでの話って多かったんですけど、なかではまあ、そこにもっていく理由があったかなと。
神田
でもたぶん、何かを深く考えて書いている小説ではないですよね。そこが肩の力が抜けていて……という評価はできるかも。でも私には同じ時代の空気が読める分、退屈だったかな。誤字脱字が多いのも作品の価値としてはとっぱらって考えたいんですけど、書き方も書き殴りみたいな印象がありました。
横須賀
雑な印象を受けましたね。
内藤
これは僕一番面白かったんですよ。すごいリアリティがありましたね。おそらくこの作者の経験してきたことを自伝的に描きたいという意図があったと思うんですよね。誤字も多いけれど、これは誤字そのままで作品として読めるんじゃないかな。
神田
『猿岩石日記』みたいに、ですか? でもそこまで特異な体験じゃないような……。恋人が死んじゃって子供を産むとか。
内藤
バブルエイジという時代を活写するという意味では、そういうリアリティもあったし。面白かったです。
岡部
これは完成度が低かったので、一次の時にすごく迷って、こういうのがありなのかなしなのか、私の段階で落としていいのか、そういう意見をうかがいたくって無理を言って入れていただいたという経緯があって……。
諏訪
でも二次では×なんですよね。
岡部
今回読み直してみて、みなさんからいい作品が上がってきていたので、これが通ることはないだろうな、と。これを10代の子が書いたとしたら等身大で素直でいいかな、と思ったのですが。

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