第一次選考通過作品詳細

『五日目のプレーリードッグ』 仕立屋 すずめ

離婚によって深く心に傷を負ったヒロインは引きこもりになる。友人の助けでようやく病院受付の仕事を得るが、そこで知り合った薬剤師と結婚したことで、再び夫に甘える引きこもり主婦になってしまう。案じた夫は1年間、失踪してヒロインがひとりで生活していく様を見守る。そんな夫は最後にあっけなくトラックにひかれて死ぬ。


選評:ボブ内藤

今回、選考をした作品の中で「心の傷を負ったために引きこもり生活をする主人公」が登場するものはかなり多かったような気がするが、これはその中でも筋金入りの「引きこもりもの」。ヒロインはズルズルと男との恋愛に逃げ込んでダメになっていく。しかし、まるっきり引きこもっているわけでもなく、そこそこ人づきあいはし、だが特定の友人知人には猛烈な拒絶を示すといった描かれ方もリアルだった。そんな主人公を見守る優秀なカウンセラーである夫(薬剤師)が、そんな主人公の様子を見かねて失踪するエピソードには感動した。それだけに、ラストで登場人物を事故で殺してしまったところは残念。

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