第一次選考通過作品詳細
『愛あるところへ』 羽生 尊子
「愛している」なんて言えない歩と、彼女をめぐる女と男のラブストーリー。秋という女性との出会い、ほのかな愛、そして死。彼女の死を乗り越え、啓介と結ばれ、生まれた子に秋の名を……。横浜、宇部、伊豆などを舞台に、泣かせる恋物語。
選評:町口 哲生
まずロケーションが素晴らしく、作品を映像化する場合、とてもいい感じで仕上がると思った。また「女が女を愛する」という設定自体は目新しくないかもしれないが、歩と秋のキャラクターとしての性格付けがとてもよく、いい印象をもった。
小説として読んだ場合、オーソドックスな部類のラブストーリーだが、何げない会話のように書いて、実は深い意味合いをもたせたり、地の文章や内面描写の部分もうまく書けており、手並みに非凡なものを感じた。文章力、描写力ともに合格点を与えていいように思われる。
ただ男性のメイン・キャラクターである啓介にあまり魅力を感じなかった点、ラストの「1年後」が余計でありエンディングを変えた方がいい点、もう少し掘り下げてストーリーを展開すべきと思われるところが多々ある点など、今一つな部分もある。せっかくいい作品なので、少々書き直した方がよい。とはいえ、伏線やオチなど構成力もあるし、胸に迫るラブストーリーだ。
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