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『アイ・キス・ミー 』 平 幸一郎
冴えない生活を送っていた恵理子は、ある日、不思議な男に出会う。彼女に良く似たその男・俊は、実はパラレルワールドからやってきた恵理子自身だった。中 学のころ、男装に目覚めた俊と、目覚めなかった恵理子。それがきっかけで二人はそれぞれ別の人生を歩むことになったのだ。
俊の目的は、自分が男装に目覚めなかったらどんな人生を歩んでいたかを確かめることだった。俊は充実した人生を送っており、自分を馬鹿にしに来たのだと思った恵理子は、彼を追い返そうとする。
しかし、次元跳躍装置の故障で俊は帰れなくなり、修理する方法が見つかるまで、二人は一緒に暮らすことになる。その生活のなかで恵理子は様々な経験をし、成長していく。そして彼女は、自分自身でもある俊を愛するようになってしまう。
だが、その想いは俊に拒絶され、まもなく俊は元の世界へ帰ることになる。別れ際、恵理子は俊にキスをする。そして笑顔で彼を見送るのだった。
選評
「パラレルワールド」、「時限装置」など、作家が逃げとして通うツールを使いながら、明らかに「うそ」とわかることを、主人公の性格や“くせ”を丁寧に描くことにより、小説自体に真実味を持たせている。
主人公を取り巻く人々も身近にいそうで面白い。映画やTV等には向いている。