第一次選考通過作品詳細

『スウィートペイン=シンドローム』 みなもと 友紀

大学院生の岸川徹也は、学習塾で講師のバイトをしている。夏休みの間は、マンツーマンでの受験生の担当だ。徹也が受け持った生徒は、高校3年生の水野亜紀だった。27歳の徹也は今まで女友達もいなければ、女性とキスをしたこともない。だが、大人っぽくて話し好きな亜紀の相手をしているうちに、自分の悩みも話せるほど亜紀と気軽につきあえるようになった。一方、亜紀はつい最近まで続いていた、辛い恋の泥沼から抜け出せずにいた。

選評

状況説明が上手くない、サイドストーリーを入れすぎなど、気になる点も多々あるのだが、それをカバーし、読み手を引きつける要素がいくつもある。
数学の研究者をめざし学業一筋、マナーや常識を大切にする徹也。一見ハデな女子高生だが、恋愛は一途で、金銭感覚もきちんとしていて友達を大事にする亜紀。タイプがまったく異なるこの二人のキャラクターが、まずは好感が持てる。
徹也の手がけるインターネットのプログラムの作成のバイトやネット麻雀。亜紀が馴染んでいる、カラオケやライブハウス、おしゃれなレストラン、自分のホームページ……。こんな今の20代と10代の生活の細部がイキイキと描かれてもいる。細部といえば、「パケホ」(パケットし放題)、「エンレン」(遠距離恋愛)、「プリチョー」(プリクラ帳)といった、今時の高校生の言葉も会話の中でうまく使っている。おかげで、女子高生を間近に見るようなライブ感が出ている。恋愛も流行にも疎い徹也が、10歳も下の亜紀にいろいろ教えてもらって完全に主導権を握られている関係も楽しい。
一転して、二人それぞれが過去に経験した恋は、どちらも目いっぱい辛く、せっぱつまった思いが詰まっている。それぞれが心の傷を乗り越えていく様も丁寧に描かれ、笑って泣け、また笑えるという温かく気持ちのいい小説に仕上がっている。

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