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『こげめのごとく』 佐藤 千鶴
うまく馴染めない高校生活に見切りをつけたいチコは、義母が出した退学する条件・次の模試で全国一位を取ることをクリアするため、家庭教師を依頼する。彼 は、御子宿菖蒲という不思議な名前のお金持ちのお坊ちゃんだった。一緒に過ごす内に、お互いに温かな感情が生まれ、家族のように生活を共にするようにな る。模試が終わった後も友だちになり、そして付き合うようになる。
そんな時、義母兄アキから荷物が届き、忘れかけていた嫌な過去が蘇る。ショウさんに誘われて旅に出るが、その先でチコは不思議な体験をし、ショウさんに自 分の過去を告白する。またショウさんも、自分の過去に向き合い整理をつけた後、チコにおいしいご飯を出すお店をつくる手伝いを依頼する。それぞれが問題を クリアし、また二人の穏やかな生活が始まる。
選評
ファンタジー映画を観た後のような読後感。登場人物が少ない分、二人の惹かれあう姿がより浮き彫りになって感情移入しやすく、また素敵な関係だなと素直に思えた。
まっすぐで不器用な二人は、何だか浮世離れした印象を受ける。その人物描写と、義母姉・アヤネの存在やピンクの犬、モルモットなどのエピソードのファンタジー的な部分とが、とてもマッチしていて全体的に不思議な空気感をかもし出しているのであろう。
ストーリー自体はありきたりで、強い個性を感じるわけではないが、とても若い女性が書いた作品とは思えない、とてもやわらかい(優しい)作風と感性に好感が持てた。